Monthly Archives: 3月 2017
データサイエンスの広がりをテーマにシンポジウムを開催
情報・システム研究機構は、去る2月20日、「分野を超えたデータサイエンスの広がり~自然科学から人文社会科学まで~」と題したシンポジウムを、東京大学伊藤謝恩ホールで開催した。大学や企業の研究者など約270名が参加し、一部で立ち見が出るなどの盛況ぶりであった。
当機構は「現代社会が直面する複雑な対象を情報とシステムの観点から捉える」という理念を掲げ、いち早く、データサイエンスの重要性を主張し実践してきた。本年のシンポジウムでは、国立大学、大学共同利用機関法人、企業から講演者を招くとともに、本年度開設したデータサイエンス共同利用基盤施設を紹介する講演を行った。また、併設のポスター会場では、データサイエンス共同利用基盤施設および機構の4研究所がその具体的な活動を紹介するポスター展示を行った。
プログラムはまず、北川源四郎機構長による機構のこれまでの歩みの紹介、続く3名の招待講演では、大学におけるデータサイエンスに関する教育分野も含めた取り組み、データの所有権やオープンデータ化に向けた課題、日本が生き残るために人材育成の上でやらねばならないこと等、種々の提言などが示され、いずれも会場から大きな反響があった。参加者からも、講演資料の公開を強く要望されており、近々ホームページに公開する予定である。
施設の具体的活動については、新施設のセンター長らからの発表に加え、南極昭和基地からの中継もあり、現地のデータ観測の様子などが伝えられた。また、データサイエンスの推進に必要な人材育成についての講演や、藤井理事から「機構の新時代に向けて」と題した講演なども行われた。
本シンポジウムは、機構のデータサイエンス共同利用基盤施設および4研究所の代表者からなるSteering Committeeの協力を得、企画立案から実施まで、URAが中心になって取り組んできた。
当日の講演資料のダウンロード、講演動画の視聴は以下から可能です↓
http://www.rois.ac.jp/sympo/2016/index.html
機構シンポジウム講演集「データサイエンスの推進について」
ダウンロードは以下から可能です↓
https://ds.rois.ac.jp/center0/
(根岸、野水)


ROIS女性躍進プログラム 国際ワークショップを開催

平成29年2月1日、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構は、女性研究者活動支援室の主催により、「世界の男女共同参画推進の新しい潮流(Future trend for women’s participation in the STEM research)」国際ワークショップを英語により開催した。北川機構長、桂理事(男女共同参画推進担当)、藤井理事、4研究所の所長・副所長、自然科学研究機構より小森彰夫機構長、山本正幸基礎生物学研究所長(男女共同参画推進委員長)、小泉周研究力強化推進本部特任教授(男女共同参画推進委員)、人間文化研究機構より小長谷有紀理事(男女共同参画推進担当)の計24名が参加した。
前半は、米国国立科学財団(NSF)副局長Kellina Craig-Henderson博士、英国ポルシャ社専務取締役Elizabeth Pollitzer博士から、米国と欧州の科学技術(Science, Technology, Engineering and Mathematics, STEM)研究における男女共同参画推進の意義と現状、将来の方向性についてそれぞれ最新のデータや研究成果に基づいてご講演いただいた。後半はパネルディスカッションにより、終了予定時刻を超過するほど活発な質疑応答が行われた。男女共同参画推進に長年取り組んできた講師である2名の博士はこの場が初対面であったにもかかわらず、互いのコメントに誘発されてさらに議論が深まる相乗効果が生まれたことから、参加者にとっては研究機関における男女共同参画をどのように推進するべきかとともに、科学とイノベーションを推進するために男女の性差に着目することが有用であるかという観点にも気づきを得るまたとない機会となった。
中村淑子(女性研究者活動支援室)
URA組織間連携による研究力強化

「謹啓 師走の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。」で始まる丁寧なメールを受け取ったのは、昨年12月に入った頃。差出人は「熊本大学のURA推進室 陳 晨」と書かれてあった。 写真・ポスター提供:熊本大学URA推進室
(遺伝研リサーチ・アドミニストレーター室長 広海健)
熊本大学は、情報・システム研究機構(ROIS)と同時に研究大学強化促進事業に採択された研究大学である。熊本大学ではこの事業で、生命科学系、自然科学系、人文社会科学系の3分野で国際共同研究拠点を組織して先端的な研究を推進するとともに、URA推進室
「研究力の強化には研究発信力の強化が重要である」という認識は多くの研究者や組織運営者で共有されているから、「遺伝研メソッド」の教科書出版以来、大学等からの講演依頼は多くある。しかし、本を最初から最後まで読んだ上で、講義を希望する項目を提案してくるのは希である。講演依頼を受ける方としても、研究者が希望する内容や組織のニーヅを把握した依頼はありがたい。相談の結果、3月に黒髪キャンパスを訪問することになった。会場の附属図書館ラーニングコモンズには大勢の聴衆が集まった。URA推進室が考案してくださった大変魅力的なセミナータイトル「心をつかむ!研究者のための科学プレゼンテーションの極意」のおかげだろう。第1部の講演会では「聴衆の期待感を作り上げるテクニック」、「伝えたいことを効率よく伝えるためのプレゼンテーションの構造」など、「遺伝研メソッド」からいくつかの要素を紹介した。
第2部の「意見交換会」では研究者やURA推進室の人たちと「科学プレゼンテーションにおける悩みとその解決方法」についてディスカッションした。私は「遺伝研メソッド」の活用形態としては、英語講師による「科学英語」としての授業(詳細はこちら)の他にも「英語」という観点を含めないプレゼンテーションの授業や学会発表等の予行演習を支援する「道場スタイル」(詳細はこちら)など、いろいろな形態があることを紹介した。
「遺伝研メソッド」のコンセプトには多くの人が共感したのだろう。その場で「第2弾」を実施することが決定した。「第2弾」では、メソッド開発者の平田たつみ教授や遺伝研英語講師のタジ・ゴルマンも参加して英語表現についても取り上げるほか、「質問の仕方」のセッションや、数名の研究発表に対して参加者全員でコメントや助言を行う「マスタークラス」セッションを含めることも決まった。医学系・生命系研究者を主たる対象にするために会場を本荘キャンパスにして、同時通訳を付けて留学生にも対応することになった。
このような意見交換を通じてURA組織間の連携の有効性が明らかになった。研究大学強化促進事業で各大学は組織の成績を上げるべくしのぎを削っているが、研究がコミュニティー全体での活動であるのと同様、研究力強化も研究コミュニティーの共同活動である。遺伝研やROISの研究大学強化促進事業も「遺伝研/ROISの研究力」(だけ)ではなく、大学共同利用機関として大学等のコミュニティー全体の研究力強化に資する活動になるよう留意している。熊本大学とROISのあいだにはすでに、ROISのURAが「大型科研費獲得セミナー」の講師を勤めるといった協力関係がある。また、熊本大学のURA推進室はROISが開発したresearchmapベースの研究業績分析ツールの活用にも積極的に取り組んでおり、 これはresearchmapを基本としたIRのモデルケースになる可能性もある。今後はURA組織間の連携によって、コミュニティー全体の研究発信力強化、さらには研究コーディネーションや共同利用促進にも取り組んでいく。
