URA組織間連携による研究力強化

遺伝研メソッド

「謹啓 師走の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。」で始まる丁寧なメールを受け取ったのは、昨年12月に入った頃。差出人は「熊本大学のURA推進室 陳 晨」と書かれてあった。

熊本大学は、情報・システム研究機構(ROIS)と同時に研究大学強化促進事業に採択された研究大学である。熊本大学ではこの事業で、生命科学系、自然科学系、人文社会科学系の3分野で国際共同研究拠点を組織して先端的な研究を推進するとともに、URA推進室を設置して研究力の強化を図っている。このURA推進室が「遺伝研メソッドで学ぶ科学英語プレゼンテーション」に着目し、科学プレゼンテーション能力向上セミナーの依頼をしてきたのであった。

「研究力の強化には研究発信力の強化が重要である」という認識は多くの研究者や組織運営者で共有されているから、「遺伝研メソッド」の教科書出版以来、大学等からの講演依頼は多くある。しかし、本を最初から最後まで読んだ上で、講義を希望する項目を提案してくるのは希である。講演依頼を受ける方としても、研究者が希望する内容や組織のニーヅを把握した依頼はありがたい。相談の結果、3月に黒髪キャンパスを訪問することになった。会場の附属図書館ラーニングコモンズには大勢の聴衆が集まった。URA推進室が考案してくださった大変魅力的なセミナータイトル「心をつかむ!研究者のための科学プレゼンテーションの極意」のおかげだろう。第1部の講演会では「聴衆の期待感を作り上げるテクニック」、「伝えたいことを効率よく伝えるためのプレゼンテーションの構造」など、「遺伝研メソッド」からいくつかの要素を紹介した。

第2部の「意見交換会」では研究者やURA推進室の人たちと「科学プレゼンテーションにおける悩みとその解決方法」についてディスカッションした。私は「遺伝研メソッド」の活用形態としては、英語講師による「科学英語」としての授業(詳細はこちら)の他にも「英語」という観点を含めないプレゼンテーションの授業や学会発表等の予行演習を支援する「道場スタイル」(詳細はこちら)など、いろいろな形態があることを紹介した。

「遺伝研メソッド」のコンセプトには多くの人が共感したのだろう。その場で「第2弾」を実施することが決定した。「第2弾」では、メソッド開発者の平田たつみ教授や遺伝研英語講師のタジ・ゴルマンも参加して英語表現についても取り上げるほか、「質問の仕方」のセッションや、数名の研究発表に対して参加者全員でコメントや助言を行う「マスタークラス」セッションを含めることも決まった。医学系・生命系研究者を主たる対象にするために会場を本荘キャンパスにして、同時通訳を付けて留学生にも対応することになった。

このような意見交換を通じてURA組織間の連携の有効性が明らかになった。研究大学強化促進事業で各大学は組織の成績を上げるべくしのぎを削っているが、研究がコミュニティー全体での活動であるのと同様、研究力強化も研究コミュニティーの共同活動である。遺伝研やROISの研究大学強化促進事業も「遺伝研/ROISの研究力」(だけ)ではなく、大学共同利用機関として大学等のコミュニティー全体の研究力強化に資する活動になるよう留意している。熊本大学とROISのあいだにはすでに、ROISのURAが「大型科研費獲得セミナー」の講師を勤めるといった協力関係がある。また、熊本大学のURA推進室はROISが開発したresearchmapベースの研究業績分析ツールの活用にも積極的に取り組んでおり、 これはresearchmapを基本としたIRのモデルケースになる可能性もある。今後はURA組織間の連携によって、コミュニティー全体の研究発信力強化、さらには研究コーディネーションや共同利用促進にも取り組んでいく。

写真・ポスター提供:熊本大学URA推進室

(遺伝研リサーチ・アドミニストレーター室長 広海健)

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