女性研究者支援ってなに? —インド2研究所を訪問してー

IISER Puneのnursery

「女性研究者はどんな支援を必要としているのだろうか?」その答えを探して、2016年1月25日〜2月4日の11日間、インド科学教育研究大学プネー校(IISER Pune)とインド国立生命科学研究センター(NCBS)を訪問しました。前者は基礎科学(数学・物理・化学・生物)に特化した教育研究大学、後者は基礎生物学の研究機関であり、どちらもインドでは生命科学系の最先端研究機関として知られています。

ある調査によれば、日本の女性研究者比率は14.6%、インドは14.3%*。どちらも国際比較ではかなり下位の数字です。しかし興味深いことに、両研究所ともfacultyの女性比率は日本の平均よりずっと高いのです(IISER Pune: 23%, NCBS: 33%)私はなにか強力な支援が行なわれていることを予想し、それを勉強してきたいと考えていました。今回の滞在ではホストのご厚意で、関連する多くの方々にお話を伺うことができたので、以下に簡単に報告します。

ハラスメント対応
インドでは、ハラスメント委員会 (Women’s Cell)とその上位対応組織であるInternal Complaint Committee(ICC)の設置が大学・研究所に義務付けられているそうです。ですが、両研究所ともICCが対応する深刻なケースは数年に1回で、特段深刻な状況ではないようでした。面談ではむしろ、「うちの研究所では、いかにハラスメントを感じずに研究ができるか」という話を聞くことが多く、特にIISERでは多くの委員が「学長、学部長の人柄のおかげで、うちはヒエラルキーのないオープンな雰囲気なのよ」と誇らしげに話されていたのが印象的でした。

学内保育所
両研究所ともりっぱな常設保育所を設置しています。インドの大学・研究所でもこのような施設を有している研究所は少ないそうです。もちろん研究所の負担は少なくないそうですが、「若い研究者をリクルートするため」に必要な設備であると認識されているようでした。また、「家族を支援することは、皆の幸せにつながることでしょ。」という言葉が印象的でした。

生活面
高学歴な人材がまだ貴重であることもあり、夫婦で同じ大学、町で職を得ることはそれほど難しくなく、ポスドクでもあまり任期を意識せずに働けているようです。家事・育児については、家政婦を雇う文化が根付いており、ポスドクの給料でも家政婦に家事を頼むことが可能であったり、出産後は親が子供の元に来て、孫の面倒を見るということが普通であったりと、非常に恵まれていると感じました。

まとめ
2研究所とも国を挙げて整備をすすめている研究所だけあり、保育所などは特例的に恵まれた環境でした。ですが、それだけでなく女性である・子供がいる、ということを気にやむことなく、研究に専念できる雰囲気が醸成されている点が素晴らしいと感じました。このような雰囲気も女性研究者比率の高さの一因であると感じました。

面談では多くの人から「で、あなたが聞きたい『女性研究者支援』ってなになの?」と逆に質問されました。私は日本の実情、支援制度などを話すと、「それはひどいわね。でも社会的なサポートが得られないのなら、研究所がサポートするべきだわ」と言われたことが心に残っています。今回の視察は、改めて女性研究者支援の有り様について自分なりに考える良いきっかけとなりました。

*FACT SHEET: Woman in Science, UNESCO Institute for Statistics, Nov. 2015, No. 34
※写真は、IISER Puneのnursery設立者ひとりのMayurikaと愛娘さん

(小林百合)