効果的な広報・コミュニケーション活動

科学英語カリキュラム「遺伝研メソッド」の人文社会研究での活用

遺伝研メソッド

「遺伝研メソッド」は遺伝研の研究者が開発した研究プレゼンテーションの方法論です。科学的思考力を強化するとともにグローバルに活躍する研究者になるための発表能力が身につくプログラムとして総研大の科学英語教育に取り入れられ、自然科学系の4研究科、9専攻で「遺伝研メソッド」を活用した科学英語授業が実施されています。

これまでの授業実施経験から自然科学系の研究者には有益なプレゼンテーション法であることは認識されているものの、研究発表の文化が異なる人文社会系の研究者のニーヅに合うかどうかは明らかではありませんでした。今回、筑波大学の招きに応じ、メソッド開発者である平田たつみ教授(脳機能研究部門)と広海健リサーチ・アドミニストレーター室長が「人文社会系研究発信週間」に参加しました。平田によるメソッドのコンセプトの説明、広海による講習会、さらには筑波大学の教員とのパネルディスカッションなどを通じて「人社系研究と遺伝研メソッドをどう接合させるか」を議論しました。その結果、このメソッドは人文社会研究にも活用可能であるという共通認識が得られました。今後は人文社会系研究者とも協力して、「人文社会版」の教材開発など、「遺伝研メソッド」の応用形態を探っていきます。

異なる学問的背景を持つ研究者間のコミュニケーションは、新たな研究パラダイムの構築や新分野の開拓の基本です。「遺伝研メソッド」のコンセプトの普及や「人文社会版」の開発・活用は、自然科学と人文社会科学の対話を深め、新たな共同研究や融合研究にもつながると期待しています。

(遺伝研リサーチ・アドミニストレーター室)

写真・ポスター提供:筑波大学URA研究戦略推進室

遺伝研メソッド

I-URIC連携企画 広報力UPセミナー開催

I-URIC連携企画 広報力UPセミナー開催

学術広報においては、日本の研究成果や研究所・大学等の取り組みを”効果的に”海外へ発信するノウハウが、ますます求められている。そこで「本当に効果がある英語発信のノウハウ —英語コンテンツ記事への取り組み事例からー」をテーマに、米国で地方紙の記者として活躍されてきた講演者に、米国におけるコミュニケーションの実態をご紹介いただき、学術広報の目標を考えるセミナーを企画・開催した。他機構3名を含む16名にご参加をいただき、講演後の質疑応答も含めて活発な催しとなった。

□開催概要
主催:I-URIC連携 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
日時:2017年6月23日(金)14:00〜16:30
場所:情報・システム研究機構URAステーション会議室(東京都港区)

講演者の佐藤広子氏は、慶應義塾大学英米文学科卒、米国ノースイースタン大にてジャーナリズム修士取得後、アメリカ地方新聞ジャーナリストとして17年(1999-2016)のキャリアを持つベテラン記者。現在米国ボストンを拠点として、日本向け海外広報サービスを提供するTHE PITCH ROOM, LLC代表を務める。

冒頭は、広報理事 樋口知之 統計数理研究所所長より、現在の学術における海外発信の課題、この課題への取り組み方のヒントに関わるご挨拶をいただいた後、当機構の海外発信の取り組みである「サイエンスリポートWebSite 英語版」について、担当より紹介と説明を行った。

講演では、佐藤氏の実経験に基づいて、アメリカにおける地方紙の現状、SNSをはじめとするメディア環境の変化と旧メディアへの影響、記者へのアプローチのしかた、ライティングのポイントなどについてお話しいただいた。前半のメディアの概況・変化の部分では日本語、後半の事例紹介等は英語で講演いただき、日本語による明確な全体像把握と併せて、具体的な事例では米国と日本との違いをリアルに感じていただける構成とした。

講演後の質疑応答では、ライティングの注意点等についての具体的なものが多く寄せられた。アンケートでも、「具体的にaudienceにreachするか」「いかに記者が読者の心をつかむか」といった課題への示唆や、「伝統的なスキル(取材・ライティング)と新しいスキル(SNS、時代への対応)の両方が必要」であることを認識したなどの回答があった。

(池谷瑠絵)

サイエンスリポート | ゲノム新シリーズ、微生物のゲノムから何がわかる?

サイエンスリポートwebsite007_ゲノム新シリーズ、微生物のゲノムから何がわかる?

広く大学・研究機関等の研究をご紹介する『サイエンスリポートWebSite 』にて、新シリーズ「僕らはゲノムでできている。」を開始しました。その第1回記事「微生物のゲノムから何がわかる?」を公開しました。ぜひご覧ください。

2003年のヒトゲノム解読で力を発揮した米国の生物学者クレイグ・ベンターの次の狙いは、海洋細菌群だった。翌2004年、航海から戻った彼は120万個もの新規遺伝子を発表して、世界を驚かせた。このように微生物のゲノム解析を通じて、その微生物が棲む環境についての情報を一挙に得る方法を「メタゲノム解析」という。微生物を実験室で培養する従来法と違って、採取してきた微生物群をそのまま読み込んでゲノム配列を決めるのが、大きな特徴だ。地球環境やヒトの体内環境は多くの微生物によって維持されているため、これら微生物群の把握には医療、創薬、環境、農業、建築など幅広い応用への期待がかかる。ゲノムを読む「次世代シーケンサー」の急速な発達を背景に発展しつつあるメタゲノミクス──そこから今、何を知ることができるのだろうか。

またコラムでは、ゲノム解析の学術連携を推進する、国立遺伝学研究所の「先端ゲノミクス推進センター」──設立以来、他の研究機関と連携した共同研究の推進、大学等からの要請により大規模シーケンシングや情報解析を実施している──を紹介。

■Science Report007「僕らはゲノムでできている」
サイエンスリポートwebsite | 微生物のゲノムから何がわかる?

答える人:黒川 顕(国立遺伝学研究所)
国立遺伝学研究所教授、先端ゲノミクス推進センター センター長。2014年より新学術領域「冥王代生命学の創成」領域代表者。2004年、日本で初めての本格的なメタゲノム解析に着手し、日本人13人の腸内細菌群のメタゲノム解析結果を公開。

(池谷瑠絵)


サイエンスリポートwebsite_英語版公開開始

サイエンスリポートwebsite001e_Getting Ahead of Climate Change

広く大学・研究機関等の研究を採り上げ、一般・マスコミの方々にご紹介する『サイエンスリポートWebSite 』を海外へ向けて発信する「英語版」の公開を開始いたしました。第1回は「Getting Ahead of Climate Change」。ぜひご覧ください。

■Science Report001 | Getting Ahead of Climate Change
Ask an Expert: Takashi Yamanouchi, professor emeritus at the National Institute of Polar Research

(池谷瑠絵)


「遺伝研発の実験技術」で共同研究の種をリスト化

遺伝研ウェブサイトに「遺伝研発の実験技術」コンテンツを立ち上げました。

大学共同利用機関である遺伝研にとって、共同研究により各大学の研究に貢献することは重要な使命のひとつです。

遺伝研には多彩な研究室があり、様々なテーマのもとに研究成果をあげています。各研究室の研究成果は、遺伝研ウェブサイトの「Research Highlights」というコンテンツに記事として掲載されています。「Research Highlights」の記事の中には、「汎用性のある実験技術」の記事が含まれていました。

「Research Highlights」中の記事を見直すことにより、汎用性のある実験技術に関する記事を洗い出し、実験技術について情報発信するために新たに作成したコンテンツ、「遺伝研発の実験技術」内にリスト化しました。また、記事になっていないいくつかの実験技術については、新たに記事を作成してリストに追加しました。

この情報発信により、共同研究の輪が広がることを期待しています。

遺伝研発の実験技術

(文、清野 浩明)

国立情報学研究所 NII SEEDs集刊行

NIIは産業応用の可能性を秘めた情報学の研究最前線を紹介し、産業界や官公庁などとの共同研究やパートナーシップの契機とするため、平成26年度(2014年度)から「NII SEEDs」を毎年発刊しています。本号では、「情報基礎科学」「情報基盤科学」「ソフトウェア科学」「情報メディア科学」「知能システム科学」「情報環境科学」の6分野で活躍する計21名の研究者の研究成果を、レポート形式で紹介しています。

また、2017年度版からは、多彩な研究者が集ったNIIという研究所をより身近に感じて貰うため、研究者個人の人となりや研究に取り組む思いなどを伝える「Researcher file」の項を巻頭に新たに設け、4名の研究者を特集しています。

国立情報学研究所 NII SEEDs集

NII SEEDs集刊行

サイエンスリポート | 北極と日本って、どんな関係?

サイエンスリポートwebsite006_北極と日本って、どんな関係?

広く大学・研究機関等の研究を採り上げ、一般・マスコミの方々にご紹介する『サイエンスリポートWebSite 』にて第6回の記事「北極と日本って、どんな関係?」を公開しました。「北極を知って地球を知る。」シリーズ最終回です。ぜひご覧ください。

遠い極寒の地にある北極が、近年、日本に近い存在になりつつある。これには2013年「北極担当大使」が任命され、同年「北極評議会」のオブザーバー国となり、また2015年には初の包括的な「我が国の北極政策」が決定されて、北極研究・観測や国際協力を具体的に推進することになったという一連の背景がある。国際社会が北極圏に注目していく動きのなかで、日本には特に、研究成果によって科学的事実を示すことへの期待がかかっているという。自然科学の知見とデータを社会のニーズにどうつなげていくか──科学者の挑戦が続く。

■Science Report006
サイエンスリポートwebsite | 北極と日本って、どんな関係?

答える人:榎本浩之(国立極地研究所)
国立極地研究所教授。北海道大学卒、スイス連邦工科大で海氷と気候の研究で博士号取得。北見工業大学教授を経て、2011年より現職。また現在、同国際北極環境研究センター センター長。

(池谷瑠絵)


遺伝研プレスリリース倍増計画

遺伝研では2016年度から、記者目線の情報発信、研究者の負担軽減をモットーにプレスリリースの方法の改革に取り組みました。

2015年度まではサイエンスライターに外注してプレスリリース資料とインタビュー記事を並行して作成していました。しかしながら、その方法には、「研究者が時間を割いてインタビューを受ける必要があり研究者の負担感がある」、「資料作成に時間を費やし実施件数が限られる」、また、「プレスリリース資料にしては冗長なのではないか」など、検討すべき課題がありました。

2016年度から広報チームの体制が大きく変わることを受け、前述の課題の解決に取り組みました。まず、資料を広報チームと研究者だけで作成するようにしました。広報チームにて作成したフォーマットをもとに、研究者に文章と図を作成してもらい、この文章と図をたたき台にして広報チームにてリライティングする方法に変更しました。

私たちのリライティングで特に力を入れているが「概要」です。概要は、記者に数多ある資料の中から目を留めてもらい、記事にしてもらうための重要なセクションです。私たちのポリシーでは、概要そのままでも新聞記事の前文に使える程度にわかりやすく、短い文章にするよう努めています。

その他の特徴的な改善点は、研究者との連絡を広報チームの元研究者がおこなうことになったことです。元研究者が担当になったことで、研究者が重視したいと考えていること、負担に思うことなどが理解できるようになり、意思疎通がスムーズなったと感じています。これらの取り組みよって、研究者のモティベーションの向上や負担感の軽減につながっていれば嬉しく思います。

2016年度はこれらの取り組みが功を奏してか、研究者のプレスリリースに対する意識が高まり、前年度比3倍のプレスリリースを実施することができました(2015年度6件、2016年度18件)。本年度も順調に実施回数を重ねています。

(文、清野 浩明)

データサイエンスの広がりをテーマにシンポジウムを開催

情報・システム研究機構は、去る2月20日、「分野を超えたデータサイエンスの広がり~自然科学から人文社会科学まで~」と題したシンポジウムを、東京大学伊藤謝恩ホールで開催した。大学や企業の研究者など約270名が参加し、一部で立ち見が出るなどの盛況ぶりであった。

当機構は「現代社会が直面する複雑な対象を情報とシステムの観点から捉える」という理念を掲げ、いち早く、データサイエンスの重要性を主張し実践してきた。本年のシンポジウムでは、国立大学、大学共同利用機関法人、企業から講演者を招くとともに、本年度開設したデータサイエンス共同利用基盤施設を紹介する講演を行った。また、併設のポスター会場では、データサイエンス共同利用基盤施設および機構の4研究所がその具体的な活動を紹介するポスター展示を行った。

プログラムはまず、北川源四郎機構長による機構のこれまでの歩みの紹介、続く3名の招待講演では、大学におけるデータサイエンスに関する教育分野も含めた取り組み、データの所有権やオープンデータ化に向けた課題、日本が生き残るために人材育成の上でやらねばならないこと等、種々の提言などが示され、いずれも会場から大きな反響があった。参加者からも、講演資料の公開を強く要望されており、近々ホームページに公開する予定である。

施設の具体的活動については、新施設のセンター長らからの発表に加え、南極昭和基地からの中継もあり、現地のデータ観測の様子などが伝えられた。また、データサイエンスの推進に必要な人材育成についての講演や、藤井理事から「機構の新時代に向けて」と題した講演なども行われた。

本シンポジウムは、機構のデータサイエンス共同利用基盤施設および4研究所の代表者からなるSteering Committeeの協力を得、企画立案から実施まで、URAが中心になって取り組んできた。

当日の講演資料のダウンロード、講演動画の視聴は以下から可能です↓
http://www.rois.ac.jp/sympo/2016/index.html

機構シンポジウム講演集「データサイエンスの推進について」
ダウンロードは以下から可能です↓
https://ds.rois.ac.jp/center0/

(根岸、野水)

情報・システム研究機構シンポジウム2016

南極昭和基地からデータ観測の様子などを中継
情報・システム研究機構シンポジウム2016

北川源四郎機構長

URA組織間連携による研究力強化

遺伝研メソッド

「謹啓 師走の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。」で始まる丁寧なメールを受け取ったのは、昨年12月に入った頃。差出人は「熊本大学のURA推進室 陳 晨」と書かれてあった。

熊本大学は、情報・システム研究機構(ROIS)と同時に研究大学強化促進事業に採択された研究大学である。熊本大学ではこの事業で、生命科学系、自然科学系、人文社会科学系の3分野で国際共同研究拠点を組織して先端的な研究を推進するとともに、URA推進室を設置して研究力の強化を図っている。このURA推進室が「遺伝研メソッドで学ぶ科学英語プレゼンテーション」に着目し、科学プレゼンテーション能力向上セミナーの依頼をしてきたのであった。

「研究力の強化には研究発信力の強化が重要である」という認識は多くの研究者や組織運営者で共有されているから、「遺伝研メソッド」の教科書出版以来、大学等からの講演依頼は多くある。しかし、本を最初から最後まで読んだ上で、講義を希望する項目を提案してくるのは希である。講演依頼を受ける方としても、研究者が希望する内容や組織のニーヅを把握した依頼はありがたい。相談の結果、3月に黒髪キャンパスを訪問することになった。会場の附属図書館ラーニングコモンズには大勢の聴衆が集まった。URA推進室が考案してくださった大変魅力的なセミナータイトル「心をつかむ!研究者のための科学プレゼンテーションの極意」のおかげだろう。第1部の講演会では「聴衆の期待感を作り上げるテクニック」、「伝えたいことを効率よく伝えるためのプレゼンテーションの構造」など、「遺伝研メソッド」からいくつかの要素を紹介した。

第2部の「意見交換会」では研究者やURA推進室の人たちと「科学プレゼンテーションにおける悩みとその解決方法」についてディスカッションした。私は「遺伝研メソッド」の活用形態としては、英語講師による「科学英語」としての授業(詳細はこちら)の他にも「英語」という観点を含めないプレゼンテーションの授業や学会発表等の予行演習を支援する「道場スタイル」(詳細はこちら)など、いろいろな形態があることを紹介した。

「遺伝研メソッド」のコンセプトには多くの人が共感したのだろう。その場で「第2弾」を実施することが決定した。「第2弾」では、メソッド開発者の平田たつみ教授や遺伝研英語講師のタジ・ゴルマンも参加して英語表現についても取り上げるほか、「質問の仕方」のセッションや、数名の研究発表に対して参加者全員でコメントや助言を行う「マスタークラス」セッションを含めることも決まった。医学系・生命系研究者を主たる対象にするために会場を本荘キャンパスにして、同時通訳を付けて留学生にも対応することになった。

このような意見交換を通じてURA組織間の連携の有効性が明らかになった。研究大学強化促進事業で各大学は組織の成績を上げるべくしのぎを削っているが、研究がコミュニティー全体での活動であるのと同様、研究力強化も研究コミュニティーの共同活動である。遺伝研やROISの研究大学強化促進事業も「遺伝研/ROISの研究力」(だけ)ではなく、大学共同利用機関として大学等のコミュニティー全体の研究力強化に資する活動になるよう留意している。熊本大学とROISのあいだにはすでに、ROISのURAが「大型科研費獲得セミナー」の講師を勤めるといった協力関係がある。また、熊本大学のURA推進室はROISが開発したresearchmapベースの研究業績分析ツールの活用にも積極的に取り組んでおり、 これはresearchmapを基本としたIRのモデルケースになる可能性もある。今後はURA組織間の連携によって、コミュニティー全体の研究発信力強化、さらには研究コーディネーションや共同利用促進にも取り組んでいく。

写真・ポスター提供:熊本大学URA推進室

(遺伝研リサーチ・アドミニストレーター室長 広海健)

遺伝研メソッド